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新宿歌舞伎町のSMバー【ARCADIA TOKYO】経営の他、各種イベントなどでも活躍する堂山鉄心の(めったに更新されない)ブログ。

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調教師15 ~第7章~ 4 成功 ~

4 成功

「間違いなく中に居んだな」
「はい。間違いありません」
「よし、行け」

さすがにあれだけ無神経な持田も、最近は事務所に泊まり込んで、自宅や別宅には一切顔を出していないらしい。
しかし、それにしても持田が動き続ける意図が判らない。
今動いて損をするのは間違いなくヤツの方だ。
意地と見栄だけの、足し算しか出来ない古いヤクザには早々に引退してもらおうとは思っていたが、ヤツはその機会さえ逃した。

金田が率いるチームは隣のビルから事務所の2階の窓へと静かに侵入する。
当然金田には出来るだけ音の出るものは使うなと指示してあった。
だが、やはり一つ間違えば銃撃戦だ。
警察の情報網を舐めてはいけない。
つまり、残念だが俺自身が現場に居るわけにはいかないのだ。
俺に出来るのは、ここでこうやって、作戦を反芻し、成功を祈ることだけである。

俺は今日のために、一人の内通者を飼っていた。
稲垣と云うチンピラに女を食わせ、絵を描いたのである。
持田はアレで中々慎重なところもあるようで、稲垣程度のチンピラの前では、未だに三山の一件もとぼけて見せているらしい。
が、俺達は警察ではない。
欲しいのは証拠ではない。
欲しいのは持田の身体(ガラ)だ。
そのため稲垣に求めるものはたった一つ、事務所の見取り図だけだった。

事務所のレイアウトは徹底して突入班に叩き込んだ。
実際に飛び込むのは金田を先頭にして6人。
狭い事務所内に大人数で入っても動きが制限され、同士討ちの危険を生むだけだ。
まず2階を制圧し、次に階下に下りる。
この作業を、いかに無音で行うかが事の成否を分ける。
そして1階の正面に原田のチームが同じく6人。
それ以外に5人で編成された遊軍チームがどちらにも行ける状態で待機している。
稲垣からの情報では、事務所に詰めているのは常時10人程度。
何も問題はない――。
はずだ。

俺は焦れた。
携帯電話を握り締めた手が汗ばみ、震えるほどに焦れた。

と、その時――。
「アキさんっ! 持田と斉藤のガラ抑えましたっ! 成功です! 作戦は成功です!」
いつになく興奮し、大げさにセリフめいた言葉を吐く原田の声が、携帯電話から飛び出しそうな勢いで響く。
「よしっ! 予定通りだ。連れて来い」
「これで……これで……」
「バカヤロウっ! 落ち着け! 詰め、誤るんじゃねぇぞ。クールにだ。あくまでもクールに行け」
俺も興奮が抑えきれない。
携帯を握る手の震えが止まらない。
予め用意していた褒め言葉など何一つ出てこなかった。
電話を切り、椅子に深く腰を沈め、腕を組み、大きく息を吐いて目を瞑った。
……み や ま……


原田達が到着するまでの30分程度が無限にも感じられた。
地下室の奴隷たちは、いつもと違う俺の空気にピリピリし、恵子だけが、いつもと同じようにニコニコと無邪気な笑顔を絶やさず立ち働いていた。
「彰雄様。今日は特別なゲストの方々が来られるんですね。私達、盛大にお出迎えいたしますわ」
「お客様は何名様程お越しですか?」
「主賓は2人だ。その他2人ほど俺の部下が来る」
「かしこまりました。主賓の方々は長い滞在になられるかも知れませんし、そのように準備させていただきます」
何も言っていないのに、恵子は理解しているらしい。
奴隷達を指揮して、酒や料理の準備と共に、部屋中を掃除し、道具の点検にまでソツが無い。
排水溝の溝を浚い、大型の換気扇に至っては、取り扱い説明書と格闘しながら、一旦バラして掃除し直すほどの周到さだ。
俺はソファーに浅く腰掛け、愛用の乗馬鞭を手でしごきながら、その時の来るのを待った。
肌が粟立ち、震える手を持て余しだした頃――。
ようやく到着を告げる着信音が、俺の携帯電話を震わせた。



5 捕獲

……がちゃり……

「失礼しますっ!」
地下室に場違いな金田の大声が響く。
「おう。連れて来い」
「おら、歩けっ!」
俺から話には聞かされていたものの、金田自身ここに入るのは初めてのことである。
金田ともう一人、吉村とか云うチンピラに背中を押され、持田と斉藤がよろよろと歩く。
「懐かしいな」
思わず凶暴な笑みが零れるのを押さえられない。
よろよろと頼りなげに歩く持田らは、拘束衣を着せられ、全頭マスクを被せられ、最後は檻の中で背中を強く押されて肩からコンクリートの床に転がった。

「う……うぅ……」
マスクの中から洩れる、くぐもった苦痛の声が俺の嗜虐心に火をつける。
「ごくろうだったな。武勇伝は今度ゆっくり聞かせてもらう事にして、今は少し休め。酒もある。食い物もある。ここんとこずっと張り詰めてたんだ。これが終わったら、本格的に休ませてやる」
「ありがとうございます。でも、原田さん達はまだ現場に詰めてるんで……自分等だけ休むわけにはいきません」
「おう、良い心がけだ。しかし、せっかく女どもが腕によりかけて作ったんだ。ちょっとくらい食ってやってくれ」
「そう、ですか……。判りました。じゃ、ちょっとだけ」

金田達に食事が運ばれる中、俺は立ち上がり、持田達が転がる檻に向かって歩いていき、上からじっと見下ろした。
みやま――。
大した業績も挙げていないクセに、古いというだけで組内でも常に加藤にタメ口を叩いてふんぞり返っている持田が、今は芋虫のように無様に転がっている。

さて――。
どうしてやろうか。
まずは、マスクを取って、言葉で恐怖を植えつけてやるか。
それとも、いきなりマスクごと火でもつけてやるか。
その後、刳り貫いた目玉でも、無理矢理自分に食わせ――。
いや。
何にしても全てを話させるのが先決だ。
そうなると、話をしやすいように、まずはマスクを外す前に――。
鞭か。

よし。
後ろを振り向いた瞬間、そこには3種類の一本鞭を捧げ持った恵子が、いつものようにニコニコと笑顔で立っていた。
この女には、俺でさえもが、時々寒気を覚える。

「どうぞ」
鷹揚に頷きながらいつもの鞭を受け取り、物も言わずに持田の顔面へと振り下ろした。
一瞬の間を置き、マスク越しに凄まじい絶叫が上がる。
後は拘束衣の上からでは大して効きもしないので、3mの動物用の鞭に変え、全身、腕だろうが、足だろうが、満遍なく30分ほど打ち続けた。

「おい。マスク脱がせて、拘束衣も取ってやれ。その後、後ろ手で手錠だ」
すぐに立ち上がろうとする金田達を尻目に女達が黙々と動く。
何もされていない斉藤も、先に脱がされ、血と痣にまみれて顔のカタチの変わった持田を見て、すっかり抵抗の意欲を失った。
「良い子だ、斉藤。さっきので判ったと思うが、デカい声だしたりしたら、俺は注意もせんぞ」
「くそ……アキ。てめぇ……何してんのか判ってんのか……」
バカはやはり、どこまで行ってもバカだ。
持田は、後ろ手の手錠ごと背中に渾身の鞭を数発叩き込まれてやっと黙った。
「俺が質問する。お前らはその答え以外一切喋るな。留美、斉藤は向こうに連れていけ」

3人に引き摺られて行く斉藤を目の端に捕らえながら、俺はゆっくり口を開いた。
「良いか? 今更お前らがやったとかやってないとか云う話を聞くつもりはない。聞きたいのは、何故やったか? それともう一つ、何故、三山だったんだ?」
「………………」
「黙ってれば好転する状況じゃ無い事くらいは分かってるよな?」
「がぁぁぁぁはぁあああっ!」
見ればいきなり恵子が肩にナイフを突き立てていた。
ニコニコと、無邪気に微笑みながら、「刻みましょうか?」
「どうする? 持田。知らんぞ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。ちょっと……ぐぅおわぁぁぁああっっ!」
「よし、恵子。一旦抜いてやれ。持田も話し難い。……で? どうなんだ?」
「判った……言う……ただし、信じてくれ……本当のことだ……本当に俺は何も……知らないんだ……」

………………。

「……持田ぁ……それか? それが、お前の答えか?」
「本当だっ! アキ。……俺も協力する。誰がやったか一緒に……」
全てを言わせずに、口の周りをガム・テープでグルグルと巻く。
「恵子……殺すなよ。まだ、必要だ。ただしこれから先、もう歩く必要は……ないかもな」
俺が、斉藤の方へと向かうために後ろを向いて立ち上がり、歩きかけた時、バチンっ! と云う大きな音と共に、今日一番のくぐもった絶叫が響いた。
一旦、斉藤の方へ向けた頭を、チラっと戻し振り返ると、アキレス腱の辺りから大量の血を垂れ流した持田の横で、ニコニコとナイフの血糊を拭う恵子と目が合った。

          *

「なぁ……どうせ持田は生きて帰れねぇんだ。何をこれ以上義理建てする?」
金田と吉村を帰した後、斉藤の尋問が始まった。

自白剤。
実は自白剤と云うクスリはない。
いろいろなクスリが自白剤として使用することが出来るというだけである。
ナチが使ったと言われる『真実の血清』と呼ばれたものは、主な原材料がチョウセンアサガオであるとも、ベラドンナであるとも言われるが、どちらにしても、主成分のスコポラミンが作用している事に違いは無い。
この無味・無臭・無色のクスリは中枢神経の抑制効果があり、普通に医療の現場などでも用いられているものだ。
が――。
その威力は凄まじく、昔南米で胸にスコポラミンの溶剤を塗った3人の娼婦が、一人の男客にその胸を舐めさせ、銀行口座の暗証番号を聞きだして預金を全て奪う――。と云う事件が実際にあったほどの効き目である。
もちろん量を間違えれば死に至ることさえあるのは言うまでも無い。

「ほん と に  しら らい  んら……」
すでに呂律の怪しくなっている斉藤に留美の平手が飛ぶ。
……7……8……9……10発。
同時に綾香等3人の女が愛撫を加える。
混乱。
飴と鞭などと云う気の長い話ではない。
精神と肉体に混乱を巻き起こす。
「ねぇ……早く喋って出したいよーって、言ってるよ……ここ」
クスリのお陰か、一向に勃起しない斉藤の粗末なモノをいじりながら綾香が甘く囁く。
「おれ たち は  ハメられ た んら……」
「その気になるまで、もっとハメてやるよ」
俺の言葉の意味にいち早く気付いた留美はさっそくゴム手袋を装着し、ローションを塗り始めている。
「ほ……ほんろ り……」
せっかくの初フィストがスコポラミンで苦痛が緩和されると云うのは、幸運なのか不幸なのか――。
少なくともヤル方としては、この上なくヤリやすい。
「こんな写真がバラ撒かれた時点で、どうせお前は食っていけなくなるんだ。この業界で」
斉藤のアナルには、留美の腕がズッポリと入り、その苦痛と弛緩の入り混ざり合った表情には言い訳の余地も無い。
「全部ウタって、楽んなれや。そんで、足洗って大阪や九州辺りで暮らせ。ちゃんと仕事も世話してやる」
「……う、うぅぅぅ……」
「何より、明日になりゃ、この女達を抱かせてってもいい。結構イケてんの揃えてっだろ? しかも、何でもアリの調教済みだぞ」
「か、かんべん……して……く れ……し、しららいん……」

自白剤などと云うものを使うのは俺も初めての事である。
やり方が悪いのか?
それとも量か? 
殺してしまっては意味が無い。
なら、どうする?
一度醒めるのを待って更に拷問を行い、その後再びスコポラミンを投与してみるか?
ダメだ。
こんなことはスグにでもバレる。
山下などの幹部連中が騒ぎ出し、加藤や冬木がここに乗り込んで来る前に言質を取っておく必要がある。

「留美。後ろがダメなら前だな」
俺がポケットから投げた飲み屋のマッチを手に取り留美が頷く。
やはり、こいつは頭が良い。
特製の診察台に寝かせ、胸、腕、手首、胴、腰、太腿、膝、足首の順にベルトで固定していく。
そうしておいて箱から一本のマッチ棒を取り出し、軸にローションを塗りつけ、ゆっくりと斉藤の尿道に挿入していく。
「斉藤。天井に鏡が無いのが残念だな。俺の設計ミスだ。 留美」
留美は、返事の変わりに、新たに取り出したマッチを摺り、斉藤の尿道に挿さったマッチに近づける。
「ちょ……ちょっと  ま れ……まっれくれ……」
震える斉藤の股間に灯がともる。
「煩ぇ……黙らせろ」
叫ぼうと口を開けたところに、タオルを押し込み、入りきれなかった部分ごと、ガムテープでグルグル巻きにする。
「何か喋りたくなったら左手上げろ。あ、留められてるから無理か……ははっ」
目を見開き、必死で何かを訴えようとする斉藤を見ながら、「お前が可愛い女の子だったら真っ赤な蝋燭なんだけどな」と言いながら、余ったマッチにも火をつけ、次々と身体の上に落としていく。
たんぱく質の焦げた匂いが鼻孔を刺激する。
黙々と作業を続けながら、留美はその目を異様に輝かし始めた。
「欲しいのか?」
「……はい……申し訳ございません」
診察台の上に寝る斉藤の身体の上に肘を乗せ、立ちバックの状態でケツを差し出す留美の股間は、すでに愛撫の必要など全くないほどに溢れ出させていた。
留美は俺に後ろから貫かれながら、斉藤の身体の焦げ痕に、丁寧に舌を這わせていく。
「まだよ……まだ、何も言わなくて良いからね……もう少し私に遊ばせなさい」
言いながら一通り舐め終え、いじり終えた後、焦げ痕に塩を振り掛け、それを刷り込んでいく。
「あぁ……来るよ……くる……その かおぉお……いぃぃぃぃぃいいいっ……」
留美は、真っ赤に紅潮し、激しく震えながら、見開いた目蓋に裏返る眼球を晒す斉藤の表情を見、点在する焦げ痕ごと、その胸と睾丸に爪をめり込ませ、自らは俺に髪を摑まれ、乳首を捻られながら激しく達していった……。



6 呆然

「おい……喉が渇いただろ? 熱かったからな」
ガムテープを外し、蛇口から延ばしたゴム・ホースで水を掛けられて失神から醒めた斉藤に声を掛け、目の焦点が合うのを待って、今度は鼻をつまみ、口の中にホースを突っ込む。
「いっぱい飲めよ。たらふくな……しかし、良かったな……持田はこんなもんじゃ済まさんぞ」
激しく咽き込みながら水を飲まされている斉藤に語りかけているとき、携帯が鳴った。
――ちっ、もうバレたか――。
早ぇな。

それはやはり冬木からの着信であった。
僅かな逡巡の後、通話ボタンを押す。
『アキぃ……跳ねンなっつったろうがぁ……しょーがねぇーなぁ、お前は……開けろ』
「え……開けろ? 今どこに……」
『地下のボイラー室の前だよ。この奥にお前が言ってた鉄扉があんだろ?』
「………………」

――何だ?
何故――。

「な、何人ですか?」
『あ? 何だそら? 俺とシゲと2人だけだよ』
確かに監視カメラには2人しか映っていない。
しかし――。早過ぎないか?
『早く開けろ! バカヤロウ!』
「……判りました……。少し待ってください」

監視カメラに向けられた顔は確かに冬木のモノだ。
それは誰かに脅されてる風でもない。
しかし、何だ? 
この強烈な違和感は。
金田達を帰すべきではなかったのか?
いや、相手は冬木だ。
間違いはない。
「恵子、留美。お前ら一応これ持っとけ」
全員に行き渡るほどには無いが、ここにも多少の武器は隠してある。
2人に拳銃を渡し、他の女達を壁際に下がらせ、俺は重い鉄扉を開き、階段を上がると、チェーンを掛けたまま薄くボイラー室のドアを開いた。

「何してんだ。さっさと開けろや」
「マジ2人だけっすか?」
「てめぇー、誰にモノ言ってやがんだぁ?」
それでも、後ろ手に拳銃を隠し、チェーンを外すために一度閉めたドアをゆっくりと開けた。
「いつまで待たせやがる。警戒心も相手見て持て、バカ!」
薄笑いを浮かべた冬木達を通し、再びチェーンを掛けた。

「あぁーあ、こんなにしやがって……」
冬木は、ボロボロになった持田と斉藤を見て文句を言ったが、すっかり青ざめたシゲとは対照的に、表情にはいつもの薄笑いが浮かんでいた。
「すみません……こいつら、強情なもんで……」
「で、何かウタったか?」、
「いや……。でも、もう少し時間ください。もう少しの間……オヤジには……」
「オヤジのことは心配すんな。そんなことより自分の心配が先だろうが」
「はい……。本当にすみません」
その最後の言葉を軽く聞き流し、冬木は持田の方へと歩いていく。
「かーっ! お前ホント やることエグいな……アキレス腱か? これ」
「えぇ、もう、歩く必要はないでしょうから」
「ホント持田も哀れだよな……。時代に乗れなかったヤクザほど惨めなモンはないかもな」
言った瞬間、極めて自然な動作で懐から拳銃を抜き出すと、間髪を入れず、持田の頭をブチ抜いた。
地下室に反響する轟音と共に銃口から立ち上る硝煙を見ても、一瞬何が起きたのか理解が出来なかった。

「ふ、ふ ゆ き……さん……?」
我ながら何と云う間の抜けた声を出したのだろう。
「抜いたらすぐに撃て……。教えてやったろ? アキ」

その時、俺の携帯が鳴った。
佐藤の第一秘書の向井だ。
こんな時に――。
無視しようかとも思ったが、この混沌とした頭を整理するためにも、状況を変えようと思った。
いや。
ただ、理解出来ない今のこの状況から逃げたかっただけなのかも知れない――。

「さ、佐藤がっ! 佐藤が撃たれましたっ!」
何だ?
どういうことだ? 一体今、何が起きているっていうんだ――。

「誰からだ? 原田か? 金田か? それとも佐藤ンところのモンか?」
――何故、知ってる――。

相変わらず薄笑いを続ける冬木の言葉には違和感しか感じない。
「教えてやるよ。アキ……。お前はな、跳ねすぎたんだよ」
その時、再び携帯電話が鳴る。
いつ、どうやって通話ボタンを押したのかも覚えていない俺の頭に、泣きながら叫ぶ金田の悲痛な声だけが響く。
「アキさーん……。原田さんがぁ……。俺が戻ったら、原田さんがぁぁあ……『パンっ!』……」
「……かねだ? か ね だ……。おい。原田がどーした? ……おいっ!……かねだぁぁぁぁあああああっ!」
僅かな足音に続いて、ツー・ツー・ツー……と、送話音だけが聞こえるようになった携帯を握りしめ、呆然と立ち尽くす。
俺は頭が可笑しくなったのか?
今、起こっている全ての事柄が全く理解出来なかった。


オヤジをよ。
加藤のオヤジを、日本一の親分にするってのはどうだ?
俺と、お前でよ……。

いつもの薄笑いを浮かべた顔で、若い頃さんざん語り合った冬木が、今は、その同じ表情のまま俺に銃口を向けていた。
その黒い黒い銃口に魅入られるように、俺は何も考えられず、何も答えられなかった。

「山下さんが使ってた今井ってセンセイがいただろ? アレの親分が現役の警察庁長官でよ。その親分さんが言うには、警察OBから現役の警視総監まで、全部ひっくるめて山下さん支援してくれんだと……」
「………………」
「味方ならまだしも、敵である佐藤なんざ、もう、いらねぇんだよ」
「………………」

「ところでアキ。お前なんで、俺を裏切ろうとした?」
「……う、う ら ぎ る ?」
「何で俺の下じゃ不満なんだ?」
「裏切ってなんかない。……は? 何言ってんすか? 不満とか……不満とか関係ねぇ」
「いつも一緒にオヤジ盛り立てていこうって言ってたじゃねーか? 何でお前一人で出て行くんだよ」
「………………」
「まぁ、オヤジも運がねぇーよなぁ。こんな甘ちゃんの若造のためによ……」
「へ? オヤジが……何?」
「オヤジはな……。お前一人のために幹部全員敵に回して……」
「殺ったのか……? てめぇ、オヤジまで殺ったのかっ!」
「俺じゃねぇっ! お前だよっ! お前のせいでオヤジはっ」

何がどうなっているのか、全く判らない。
気が付けば俺も冬木に対して銃口を向けていた。
「この状況で、どうすんだよ。言っとくが、外は山下さんの兵隊で溢れてんぞ。ドア破って入って来るか? それとも一生出れなくなって餓死か……。仮に俺を押さえたところで、人質としての価値なんざ、これっぽちもねぇーからな」
「てめぇ山下にしっぽ振ったのか? それでオヤジ売ったのかっ? そうだ……三山! 三山もてめぇーかっ!」
「いつまでも昔の怨恨引きずって俺から離れていく、そんなお前なんかをかばい続けっから悪いんだよ! 力だ! この世界は力だけが全てなんだ!」
「怨恨? 大垣のことか? アレは独立してから俺一人で……。組に迷惑なんざ掛けねぇー程度に……。って、そんなことで三山を……」
「一つ……。死んでいく、お前に一つだけ教えといてやる。その大垣だがな……。どこにいると思う?」
「し、知ってるのか! まさかてめぇー知ってんのか!」
「そりゃー知ってるさ……。俺が京子ちゃんの隣に埋めてやったんだからな」
「な、何故だっ! 何故黙ってたぁぁあっ!」
「あの頃お前は、それだけを生きがいに働いたんだ。アレがあったから死ぬ気んなって働いたんだよ。完全にフヌケてたお前がな。当然、オヤジの指示だ」
「嘘だ……オヤジが……う そ だ……」

もう、何が本当で何が嘘かも判らなかった。
その時、階段の上の方から、凄まじい破壊音が聞こえてきた。
「ほら、もうすぐ山下さん達が雪崩れ込んで来んぞ……。そうなりゃ、お前。もっと酷いことになる」
「くそぉ……。てめぇは……。てめぇだけは……」

俺の脳裏に冬木との思い出が蘇る。
2人で一人の女を輪姦(マワ)したこともあった。
2人で舐めた口を利いた飲み屋で暴れて、オヤジにさんざん殴られた。
2人でパチンコにも行った。
競馬や裏カジノ……。
俺と冬木との間にベタベタした友情などは無かったのかも知れない。
だが、考えてみれば、遊びはほとんどこの冬木に教えてもらったのではなかったか……。

「さ……アキ。観念しろ……。せめて俺が……殺してやる」
視界がぼやけた。
泣いているのか。
俺は。
涙など――。
涙など、とっくに枯れ果てたはずでは無かったか。
大垣を追いかけ、大垣を忘れかけたころに、本当のことを知り、知った時には、実の兄のように慕った人間に裏切られ……。
俺は、泣いているのか――。

バンっ!
地下室の中でやけに大きく響く轟音に弾かれ――。
冬木は静かに倒れていった。

――冬木さん。
銃口向けたら、喋ってちゃダメだって、教えてくれたじゃないですか――。

横を見ると、拳銃を投げ出し、血の溢れ出す腰を押さえて無様に叫びながら転げ回るシゲの姿と、その向こうで硝煙をたなびかせている2つの銃口があった。

いつの間にか鉄扉の向こうは大騒ぎで、やれバーナー持って来いだとか、電動カッターだとか煩い事この上ない。
俺は倒れた2人の男の前まで歩いていくと、至近距離から1発ずつ、それぞれの眉間に弾を撃ち込んだ。
鉄扉に赤い線が走っている。
バーナーかトーチのようなものまで用意していたとは驚きだ。
この地下室のどこにも逃げ場などは全く無く、どの道、俺も長くはない。
だが、ただでくれてやれる命などはすでに無くなった。
とはいえ、鉄扉に走る赤い線からは、すでにチラチラとこちらに向けて、悪魔の赤い舌を思わせる炎が覗き始めている。
何も考えられない頭にぼんやりと浮かんできたのは、死んで行った部下のことと、ここに残った女達のこと。

悪りぃな、お前ら。
俺もすぐに、逝くからよ――。





次回は、いよいよ完結!
調教師16 ~ 最終章~ 1 窮鼠 ~ エピローグへ続く





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Author:堂山鉄心
大阪府出身。 大阪を中心にSM活動を広げてきたが、ARCADIA TOKYOの出店に伴い、その活動の拠点を東京に移し活躍中。

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